食の安全について
中国の農薬入り冷凍食品、乳製品の増量剤の使用、そして国内では、事故米の食品使用。
消費者は何を食べれば安全なのか、食の環境はますます混迷を深めています。
人間にとって最も大切で必要不可欠なもの、それは「食べ物」。
終戦後、食糧増産の掛け声のもと連合国(おもに米国)の栽培技術を取り入れ化学肥料や農薬を多用し増産に次ぐ増産を政府の号令のもとすすめてきました。
この間、政府農林省(現農水省)の農業政策は、大規模集約農業化(主に北海道や秋田県の大規模稲作地帯)を展開するとともに、一方では多すぎた米を減反政策で減らし転作畑地を奨励するもそれが休耕田を増加させ、しまいには農地放棄につながってきました。
日本政府の農業政策はめまぐるしく変わり「猫の目農政」とまで言われました。
販売方法も従来の日本の小売り形態から大きく変わり、欧米様式の大量販売店(スーパーマーケットなどの量販店)が導入展開され、低価格を売り物にした販売が主流を占めてまいりました。
また、世界の食糧事情も大きく変わり、グローバルな見地から輸入農産物が年を追って増加しました。と同時に消費者の安い食材のニーズに応えるため、人件費の安い労働力で食料を調達できる中国をはじめとする東南アジアや輸出大国の米、豪、加等からの輸入が増え続けてきました。また世界食糧輸出国からはウルグアイラウンドに見るように、自国の農業保護で高関税をかけられなくなり、なし崩しに輸入を認めざるを得なくなり、そのため日本農業は崩れてきています。
日本の農業は、北海道を除き狭い土地で農業を営んでいるのが大部分です。俗に昔言われた「三ちゃん農業」(爺ちゃん、父ちゃん、母ちゃん)は、少子高齢化とともに大きく変わり今では息子、娘は農業を継がず「じいちゃん、ばあちゃん」農業に変わっています。毎年農家戸数は減少し、高齢化とともに日本の農業はどうなるのだろうと思わずにはいられません。それは、額に汗しても収入が良くなく借金が増えてゆく親を見ているから、子供は農業を継がないのです。
戦後60数年を過ぎ時代背景の変化ととともに歩んできた日本の農業は、食糧自給率の低下と輸入農産物の安全性と日本農業の展望に大きな課題が横たわっています。
安全安心の農産物は、前述したように欧米型の化学肥料、農薬多用の農業で農地はやせ衰え健康な農地が姿を消し、そのため病害虫が発生しても自除作用ができず農薬の使用に頼るという悪循環に陥ります。当然作物や農地に残留農薬が発生します。
私たちは、20年前から農産品の安全安心と生産者の持続継承のもと「有機栽培」を前提とした農業を訴え理解のある生産者、消費者、団体と流通を行ってまいりました。
農水省が「有機農産物」の定義を決め発表したのは今から15年ほど前でしたが、消費者に判りづらく再三の修正をして現在に至っています。しかしながら生産と流通は大変困難を極めています。
それは、化学肥料や農薬に依存しない分生産コストがかかり、残念ながら収穫量も通常栽培より1〜2割減ってきます。また見栄えもかならずともいいとはいえません。
消費者は、店頭でまず価格を見てさらに見栄えを優先し選択します。
そういった訳で有機産品の流通はごくわずかとなります。有機栽培の先進国であるフランスですら流通量の5%が精一杯です。日本は1%もあるでしょうか、ごくごくわずかなのです。
時代は、女性の地位の向上とともにあらゆる分野への進出で共稼ぎが増えました。
昼目一杯務めて夕飯の支度もこなすのは大変なことです。専業主婦ならば自分で材料を買ってきて自分の味付けで自分の味を作りますが、専業主婦が少なくなってきたことから出来合いの調理品や冷凍食品に頼る家庭が多くなりました。販売店ではそういったニーズにこたえるためにも安くてお手軽な商材で消費者ニーズに答えようとします。
そのため安い原料を求めたり化学添加物で味付けしたりして購買意欲を掻き立てます。
当然、国内原材料が高ければ輸入品に頼ります。誰がどのようにしてどう作ったかも解らないまま輸入品を原材料として使用します。我が国の輸入検査体制は整備されておらず抜き打ち検品でもごくわずかな量しか検査されていないのが実情です。それも決まった範囲の農薬だけです、それ以外のものは調査対象外だから大通りです。
こうなってくると何を買えばいいのか消費者は常に不安になってきます。
商品には、当然生産原価があります。それに流通経費と適正利潤を加え価格が決定されます。流通が複雑となると当然経費は増え販売価格は上がります。現在では、流通を簡素化して流通経費を抑えるようになっています。いま問題にされているように、卸売市場の必要性が問われています。ちなみに生産者が農協を経由して首都圏の市場に出荷するとおよそ30%強の流通経費がかかります。それを末端の量販店では利益をかけて販売します。生産者から買うとこれが15%位の経費となりますので消費者にわたる価格は市場経由価格の80%位です。価格でみるとこうなりますが、市場には市場の役目もまたあります。それは流通の円滑を図るという大きな役目があります。量販店からの大量の注文に対して数をそろえて渡すということです。だからおいしくても数のそろわない農産品には値段がつかないことが多いのです。生産者は、頑張って安全でおいしいものを他人より努力して作っても価格に反映されないのが実情です。
食の安全性がさけばれてきたのは随分と久しいことです。
消費者の究極の選択は「安くて、おいしくて、安全なもの」につきます。
しかしこれがなかなか難しいことです。昔は「旬」がたくさんありました。「旬」は、一番おいしくて大量に取れるので価格も安いということで、消費者もそれを知っていてその時期はそれをたくさん食べていました。いまはもう「旬」は存在しません。店頭では、年から年中同じ野菜や魚が並びます。と同時に冷凍や生産加工技術の進歩で冷凍食品や加工食品が大量に出回っています。昔魚屋さんの店頭では「今が旬だよ、おいしくて安いよ」と声をかけて売っていましたが、その魚屋さんや八百屋さんが量販店の進出で廃業に追い込まれ極端に減少しています。消費者は、自分で考え賢い買い物をしなければならない時代となりました。縦に長い日本列島は、野菜にしても南は九州から北の北海道まで収穫時期が変わります、リレー出荷といって、いつでも店頭では産地は違えども同じ商品が並びます。
日本で取れない時期は、海外から輸入です。こうして年から年中切れ間がないのです。
これでは「旬」なんか感じませんよね。
また、縦に長い日本列島にも問題があります。なぜなら気候条件が南と北では大きく違うからです。高温地帯では梅雨がありますが畑の栽培ものは病害虫の発生が多く農薬を多用します、北国は冷涼な気温のせいで病害虫の発生は南の産地よりはるかに少なく農薬の使用量も少ないのです。北海道は、その意味で本州から比べ慣行栽培でも農薬の回数が少なくより安全性が高いといわれています。われわれが、「地産地消」を掲げるのもうなずけていただけると思います。
輸入品については、いま大きな問題となっている中国野菜や食品に見るように、農薬の混入や増量剤の添加などとても安心して食べられるものはありません。それでも商社を通じ量販店は輸入食料を消費者に販売しています。前述したように検査体制や生産体制に問題がある以上今後も出てくる問題ととらえています。
消費者の皆さんは、安くて安全なものを求めていますが、実態はおよそかけ離れています。
ただ言えることは、消費者も少なくとも無理願いをしているのかナとも思います。
「安くてうまくて安全なもの」これを探すのはよほど知識と経験がなければ困難なことです。むしろそういったものはないと考えたほうがいいと思います。
これは、先ほども述べましたように生産コストとの兼ね合いがあるからです。
比べるのなら価格でなく、その素性を比べてください。高くても安全でおいしいものを少しだけ買って料理に工夫を凝らすと随分と食卓が輝いてきます。
出来合いのものや、冷凍食品は確かに便利ですが、家庭での一手間が安全安心につながります。材料を吟味する目と調理の無駄をなくして「家庭の味」を作ることが家族のつながりを強くしアットフォームを築きます。
今、問題となっているTPP(環太平洋戦略的経済連携協定)については、多くの問題点があります。
食料自給率の向上が叫ばれて久しいことですが、このTPPに参加することは、あらゆる関税の撤廃を意味します。当然輸入品ばかりでなく輸出品にも当てはまります。
日本は、面積も狭く資源の少ない国で貿易立国です。
経済のグローバル化が進む中、輸出産業(自動車、機械など)は、貿易相手国の関税が安くなれば当然国際競争力もつくし、輸出額の増加がはかられます。輸出金額が大きいだけ大きなメリットとして歓迎されています。
その反面 輸入品は大きなデメリットが生まれます。
政府は、食料自給率を50%にすることを掲げておりますが、TPPに参加となれば関税がいずれ撤廃され、海外の安価な農産物や加工品が洪水のように国内になだれ込んできます。となれば国内農業は立ち行かなく、壊滅的な打撃を受けます。
食料自給率50%どころでなく試算では10%台にまで落ち込むといわれています。
とかく一次産業は、自動車、機械産業の輸出増加を図るために犠牲になっていることは歴史が物語っています。
国民総生産は確かに上昇するでしょうが、一次産業が衰退を極め輸入食品ばかりで日本は食を賄わなければなりません。どこの国でも自国の食料を確保したうえで輸出を図っています。もしどこか輸出国で大不作となったときに他国に輸出をするでしょうか?
人間の生きてく上で根幹である食べ物を他国に委ねていいのでしょうか?
農業水産団体ばかりでなく多くの自治体、消費者団体や識者が反対をしています
反対の理由は沢山あります。日本の一次産業や関連産業の衰退と食料自給率の大幅減少があります。さらには、輸入食料品に頼ると安定的に確保ができるかという懸念。そして輸入食品の安全性の問題が大きくクローズアップされてきます。一次産業が大きな痛手となることはすなわち地方の衰退につながります。日本の企業業態を見ても大企業と呼ばれている企業はほんのわずかで、中小弱細企業が大部分です。大企業は輸出に活路を求めていますが、大企業にはTPP参加は大きな追い風となります。反面一次産業関連中小零細企業は倒産、減少の憂き目を見ます。しいては日本の産業構造が大きく変わらざるを得ません。人口はますます都市部に集中し、地方は若者の都市流出が今よりさらに加速度的に進みます。結果的に地方は高齢者のみになってしまい、地方自治体が崩壊します。
こう考えるのは杞憂でしょうか?
政府は、来年6月頃まで参加を見合わせましたが、国内合意が得られるのでしょうか。
GDPのアップを図るためそして日本の経済力を強くするためだったら、日本の食を犠牲にしてもいいのでしょうか、「日本の一次産業はわずかでそのために他の産業が優位性を保たれなくなることはない」と某大臣が発言しましたがとんでもないことです。
馬鹿なこんな大臣がいるだけでも現政権は国民のことを本当に考えているのかと疑います。
来年6月までの間に、TPP参加のメリット、デメリットを論議しあい、デメリットに対しての対策を創り上げ、国民合意を取り付けて結論を出してほしいものです。